尻尾と牙とまた尻尾
2010年9月16日(木)・17日(金)・18日(土)の3日間、吉祥寺のギャラリー Art Center Ongoing にて
ダンサー/振付家の神村恵さん『尻尾と牙とまた尻尾』というイベントを行いました。

私たち二人は全く違う方法で踊りを作り出します。
それでもお互いに、ずっと気になってきた存在でした。

私たちが違うことだらけにもかかわらず共感を感じてしまうのは多分、神村さんの言うように
”自分の感覚に対する欲深さ”という共通項があるからかもしれません。

そして私は、もっと奥深いところで、私たちは同じ根っこを持っているように感じてきました。

『尻尾と牙とまた尻尾』の三日間、お互いに踊り、見合い、また話し、また踊りました。
内容は毎回、メールの言葉や前日の踊りとトークから、お互いが感じ合ったことをもとに生まれて進んでいきました。

毎日がとても即興的で実験的で、スリリングな旅のようでした。

私たちはたくさんの言葉のやり取りをしました。

イベント初日にむけて事前にメールのやり取りをしました。

【往復メール1】 神村→大倉 2010.08.25
          大倉→神村 2010.08.26

【往復メール2】 神村→大倉 2010.09.05
          大倉→神村 2010.09.07

【往復メール3】 神村→大倉 2010.09.13
          大倉→神村 2010.09.14

そしてむかえた初日は、それまでのメールをてがかりに、二人のそれぞれのソロとトークという流れになりました。

【2010.09.16 トーク】神村×大倉

その後、二日目にむけての往復メールです。

【往復メール4】 神村→大倉 2010.09.17
          大倉→神村 2010.09.17

二日目は、神村さんが萩原朔太郎の詩『蛙の死』を、大倉が森山大道の写真『木古内』を持ち寄って題材にし、
即興でそれぞれに踊りました。
同じ題材で踊っても二人の踊りは全く違います。
神村さんと大倉がそれぞれに、その題材からどのように感じ、踊りを生み出すのか…。

【2010.09.17 トーク】神村×大倉

三日目は、最初にトークをしました。
作品を作って行く上での具体的な話から始まり、なぜ、私たちはそれぞれの感覚を追い求めているのかを…。

【2010.09.18 トーク】神村×大倉

そして最後に二人で一緒に同時に踊りました。もちろん即興です。
今までお互いの踊りを見合って感じてきたことと、言葉でやり取りしてきたことを、体で感じ、理解することができた貴重な時でした。

そして最後の往復メールは、イベントが終了してからのものです。

【往復メール5】 神村→大倉 2010.09.28
          大倉→神村 2010.10.01

これらの言葉の数々から、そして、『尻尾と牙とまた尻尾』の三日間の体験から、
自分一人だけでは見つけることのできなかった視点と感覚に出逢うことができました。
からだの内に新しく芽生えたこの感覚を、発酵させ発光させていく喜びに胸おどらせています。

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1年前にやったトークを、ようやく文字起こしできました。
1年もかかったのはひとえに私の仕事の遅さです。
漠然と大変そうという思いに、入口手前でずっとぐずぐずしていたからです。
大倉さんがそれをじっと待ってくれたので、ようやく完成となりました。

つい内容をかいつまんで点だけ押さえてしまいたくなるのをこらえて、
テープを何度も聞き直しながら、起伏のいちいちをたどるように文字に起こしていく作業は、
大倉さんの踊りを追体験するような気持ちでもありました。
枝葉の部分だし不要だよねと切り捨てられるものが、作業を進めるうちに減っていくというか、
細かい言葉遣いや相づちや間(ま)の中に、また別の次元の内容が立ち上がってくるような感じもありました。

ここはひとつ音楽にたっぷり浸かるように、読んでいただければうれしいです。

最後に大倉さん、本当にどうもありがとうございました。

2011/10/02 神村恵
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神村さんとこの企画でご一緒してから約1年経って、二人のトークの全文を文字に起こしました。
そのときの私にはわからなかった神村さんのいくつかの言葉にも、
今ようやく、なるほどなあ~と感じ入ること、
共感することがいくつもありました。

トークを何度も聞き返し、文字起こしを進めながら、

 思考を広げること。
 視野を広げること。
 ○○は○○だという考えに囚われないこと。
 一方向にならないこと。
 
と、いうような想いにもすがらないこと。
 
 自分の直感に、直観に、いつだって委ねられるように!

という言葉が
からだの奥から湧いてきてはまた深く染み込み還ってくるような時を過ごしていました。

神村さん、ありがとう!

2011/10/02 大倉摩矢子

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協力:Art Center Ongoing



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