taiwa03

堀内一紀(魁 店主/料理人)
1978年10月28日生まれ
趣味 酒
尊敬する人物 ブルースリー
2003年 西裏魁を開業(山梨県 富士吉田市 下吉田301)
2006年 河口湖魁開業(富士河口湖町 舩津5516-2 )
2010年 金鳥居魁開業(富士吉田市 上吉田2-20-1/本店)
2011年 魁ベッケス開業予定(同上)
型にはまることをこの上なく拒むへんくつな性格。
  伊藤亮陽(墨壷屋/大工)
墨壷屋デザインワークス http://www.fujigoko.tv/sumitsuboya
建築会社(デザイン・施工)を兄(伊藤泰蔵)と経営。
最近では
「魁(本店)」
「ご馳走屋うちわ」
などの建築を手がける。
       
  高村直喜(宿店主)
1979年生まれ
山梨県山中湖村にある三代続く宿ホトリニテの店主。
幼少期は野山を駆け巡り、毎日泥だらけになるまで遊んでいた。
(この時期に得た遊びの感覚が今役に立っているような気がします)
高校を卒業後、クラブDJになるべく上京。数々のイベントに出演、日本初のターンテーブリストの祭典にも出場。その後、カナダではDKNYファッションショーの音楽監督や様々なミュージシャンとセッション。
帰国しカナダで描いた夢を京都 石峰寺の伊藤若冲忌で奉納演奏という形で叶えさせてもらった。その時に「出逢う」ということを意識する。
それから、バイオリンとターンテーブル、スピーカー10個を使った空間表現を模索した。10年間の音楽活動を青森県立美術館「許色」演奏公演を最後に休業。今は、宿ホトリニテのコンセプトである「出会いの絶景」を目指し、宿という場所を使い日々真剣に「遊んでいる」
  鎌田幹子(美術家/グラフィックデザイナー)
1999年頃から、現代美術という自覚もなく都内のクラブなどで作品を発表し始める。自分の中の葛藤などと社会的なできごとなどがないまぜになったコンセプトと場末のまち、ゴミ、廃墟、などを撮った写真や本物のゴミなどで構成されたインスタレーション、ダンサーとのコラボ作品を多数制作。が、ある日身体を壊し、マクロビオティック(玄米菜食)を始めるとともに、制作コンセプトが自然と人の繋がりに大きくシフト。同時に社会的な問題へどうやって関わっていくかを模索し、自分が住みたい場をつくりだすことに興味を持ち、エコビレッジ活動に参加。そんな折、友人が移住した藤野という山ばかりの町にひょんなことで引っ越す。住んでみてから藤野の自由度、住んでいる人の変さ、エコビレッジ濃度の濃さに驚く。藤野の諸活動に関わっていくうちに在住3年に。「家族、子供、自然」という環境に馴染みつつ、色んな面で模索中。http://wotwisp.com


魁(さきがけ)
料理人/堀内一紀が経営するお店。2010年春には山梨県富士吉田市の本町通りに本店をオープン。独自の思想から成る、五感を揺さぶるおもてなしを提供できるよう 志していくことがコンセプト。
富士山麓から世に向けて、人情あふれるこの土地で今宵も宴が始まる・・
http://www.sakigake.biz/
魁 本店  http://sakigake01.exblog.jp/
魁 河口湖 http://sakigake02.exblog.jp/
魁ベッケス http://sakigake03.exblog.jp/
宿ホトリニテ
「ALLもてなし」人の五感に響くものを…視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚。
この全てにおいて満足して頂けるように、またホトリニテから多くの「つながり」ができるように。そして、俳人・永田耕衣が言った言葉を感じてもらえるような宿でありたい。
その言葉は「出会いの絶景。」
ホトリニテは「人・時間・物・場所」全ての「出会いの絶景」を目指します。http://hotorinite.exblog.jp/


 


1+1+1+1+1=大きな1

共感
個性
生かされている、ということ
喜び
楽しんで

大団円





  ookina1
    2010年6月29日。
高村直喜くんが2011年より三代続く宿の店主となる「ホトリニテ」は、
山梨県は山中湖のほとりにある宿です。
ホトリニテはいつ来ても落ち着く場所です。
各部屋の窓からは穏やかに広がる山中湖が一望できます。
一歩外に出て振り向けばすぐ目の前に見える富士山は、頂上をこの手で掴む事ができそうです。
私は直喜くんと出会ってからかれこれ10年近くになります。
出会った頃音楽活動をしていた直喜くんとは、お互いのライブや公演を通じて交流を深めてきました。
直喜くんと、そしてその周りにいる人たちはみな素敵な人たちです。
出会いと、人と人との繋がりを大切にし、そこから様々なことを感じ、
いつも自分を高めている直喜くんの話はいつも新鮮で魅力的です。
お互い住んでいる場所が離れているのでゆっくり会うのは何年かに一度ですが、
そのたびにいつも心地良く繊細な気配りで接してくれる人です。
今回は、直喜くんを通じて出会った、料理人の堀内一紀くんと大工の伊藤亮陽くん、
そして「対話第2回」に引き続き、
美術家でありデザイナーの鎌田幹子さん(このサイトのデザイナーでもあります。)と、大倉の5人で、
山梨県富士吉田にある、一紀くんのお店「魁 本店」で、対話のひとときをすごしてきました。
この日の昼頃 宿ホトリニテ に鎌田さんと大倉到着。
直喜くんの案内で、私たち世代には古き良き昭和の香りが懐かしく感じられる
富士吉田の西裏地区にある「リンカ」(現在は閉店している)というお店でおいしいお昼ご飯のあと
街を散策しました。
それから山梨の名勝「猿橋」へ。
白、薄紫、薄桃色…ふわふわの紫陽花に彩られた小道も綺麗でした。
夕方には富士山麓樹海にある天然記念物「富士風穴」を訪れました。
そこでは違う次元に触れ、触れられたような感覚を覚えました。
地に真っ暗な口を開けこちらを見上げる風穴。人間の想いを飲み込む樹海の自然。
樹々の静謐とざわめき。私は畏敬の念を感じずにはいられませんでした。
直喜くんと鎌田さんは初対面でしたが、山中湖と藤野は近く、また、どちらも地域に根ざし、
表現に携わっている人が多く住んでいる土地ということもあって、道中は色々な話題で盛り上がり、
二人はすっかり意気投合していました。

    夜9時。
富士吉田 魁 本店。

古民家を改築して作った魁の外観は、どこか懐かしく、それでいて斬新。
他にはない個性と魅力のある存在感。
建築をてがけたのが、大工の伊藤亮陽くんと、お兄さんの泰蔵くん。
お店に流れるBGMを選曲したのは直喜くんです。
印象的で個性的なお店の入り口(のちほど対話の中でも話題にでてきます)をくぐると、
お店の中はたくさんのお客さんの笑顔でどこまでも広がっていくようです。
天上が高く奥行きのある店内は、明るく活気に満ちあふれています。
お店の一階から二階の座敷へと続く通路は、右手にはカウンター、左手にはテーブル席。
笑顔にあふれるお客さんの間を真っ直ぐに店の奥へと伸びていきます。
カウンターの中で料理をしている店主の一紀くんはじめ、
スタッフみんなの笑顔とエネルギーに迎えられ、通路を一歩、また一歩と進めば、
暖かくて深い「魁」の懐の中に、嬉しくなって楽しくなって導かれていくのです。
お店の通路を一歩一歩と歩を進めながら、
私は、一紀くんがお店に、料理にかける志が伝わってくるようだと感じました。
それはこの明るい通路のように、たくさんの人たちの笑顔にかこまれている
一筋の道のように感じられました。
 
今宵、二階座敷の一室にて、美味しい料理とお酒と共に、対話は始まります。
(伊藤亮陽くんは仕事のため、少し遅れて来ました)


直喜(以下:直):鎌田さんが藤野に場所を移ってからの変化っていうのを聞きたいな。
幹子(以下:幹):アート系の話っていうよりも、生き方の話をすることが多くなった。
摩矢子(以下:摩):生き方。
幹:もっと大きい話。表現の話は小っちゃいて言えば小っちゃい…。
直:生き方に含まれてるって感じだよね?表現とか美術とか芸術とかも、それにくくれないものっていう感じがする…
一紀(以下:一):こんばんはー。
直・幹・摩:おおおーっ!

魁 店主の堀内一紀くん(以下:一)がお仕事を一段落し、対話に参加です。

直:何か飲まないんですか?
一:超二日酔いで…
直・幹・摩:笑!

そんなこんなで皆のお酒がそろい、乾杯のあとしばしお互いに自己紹介などのひととき…

一:あと二杯飲めばなおって
直:浄化される?(笑)
一:テンション上がってくるんで(笑)

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—今回の対話は、わたくし大倉の「みんなに会いたい!話を聞きたい!」という気持ちから始まりました。

私は、2010年1月に、宿ホトリニテで高村直喜くんの主宰により行われた  山梨県白州在住の舞踏家、玉井康成さんによる「踊り」と、
堀内一紀くんによる「料理」のイベント「ホトリニテ♯01」で  初めて一紀くん、亮陽くんとお会いしました。
イベントが終わったあとのホトリニテの食堂で、皆で話していたときです。
3ヶ月後の4月に「魁 本店」のオープンを控えた一紀くんが、御自身のお店に、料理にかける想いを話していました。
 『こういう時代だからこそ、人と人との繋がりが大切。皆に笑顔になってもらえるように』と。
一紀くんの顔は明るく輝いていて、とてもとても綺麗でした。
その場には大勢の人がいたので、直接お話をすることはできませんでしたが、私は、ぜひまたゆっくり会ってお話を聞きたいと思いました。
今回私の気持ちに快く応えてくれた  直喜くん、一紀くん、亮陽くん、鎌田さんは、人と人との繋がりをとても大切にしている人たちです。
だからこそ私は、この機会を、ただ自分が会いたいから会って、話をして、ああ、楽しかった、 という個人的な喜びだけで終わらせず、
ここから新たな広がりが生まれ、多くの人へと繋がっていく場にしたいと思いました。
そこで、自分のサイト内ではありますが、この『対話』として、皆とお話したい、とお願いしました。

タイトルの『1+1+1+1+1=大きな1』は、ロシアの映画監督、アンドレイ・タルコフスキーの映画『ノスタルジア』から着想を得ています。

男性が、手の平に水滴をひとしずくずつ
そして
「一滴と一滴は二滴ではない 大きな一滴になる」
と話すシーンがありました。

人と人との出会い。
そこで、私たちは、相手のことを知りたいと思うし、自分のことも伝えたいとも思う。共感したい。
そして今一緒にいる人たちと過ごしているこの時を、豊かなものにしたい。
そのような気持ちが、誰の内にもあると思います。
一人ではなく、今この場所に皆が出会って、自然に話しているなかから
うまれてくるメッセージがあると思うのです。
みんなの気持ちからうまれてくる言葉と感触をそのままに、 このページを読んでくださる方々と共感できるものにしたいです。
この『対話』から皆が大切にしている気持ちが伝わり、繋がっていくことを願っています。

 
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    直:実際、一紀くんはこの「魁 本店」をつくるときって、
  やっぱりある程度イメージしてたんですか?人がわんさかわんさか来て…
一:最初からそういう感じにしようと。
  やっぱりこの時勢に、洒落た店とかそういったものをやりたいんじゃなくって、
  皆に元気を与えられるような「箱」を作りたい、そういう感じで…
直:「空間」とか言わないで、「箱」って言うのがいいよね。
摩:そうだね。
直:そこがもう、一紀くんの感性にしてありえる…。
  「箱」ね。「箱」っていう言い方ってなかなかできないね。
摩:できないよねー。
直:俺らだったら多分「空間」って使っちゃう。
摩:使っちゃうね、曖昧な言葉を使いがちだね…。そこは(一紀くんは)すごいと思う!

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直:今の一紀くんを形成したものって何だったりするんですか?
一:それは、やっぱり、弟の死があったかな。
  そういう壁があったから、自分を見つめる時間がすごい多かったかなっていう…
    常に自分との葛藤の中で。
直:それはじゃあ、もう、弟が自分の中にいて、一緒にやろうとかそういうんじゃなくて?
一:そういうのもある、含めて。
直:けっこう、俺から見て一紀くんってすごい熱い部分があるんですよね。
  人情っていうのを一番大事にしてるし、そういうのが感じられる人ってなかなか…若い年代でできないと思うんだよね、俺は。
  それをやっぱり感じる、店づくりにしても。
摩:それを気持ちでは持っていても、実際にかたちにできる、かたちにすることができる強度っていうのはまた違って…
  それをちゃんと両方が一緒に、自分の気持ちとやっている行動にブレがなくてやっている人だと思う。
直:っていうふうに伝わる。それは下手に「オレ、アートやってます、芸術やってます」って言う人間よりもずっと強い。言葉じゃないものがね。
摩:そうだね。その言葉に私は一言も付け加えなくてもいいぐらい、私も一紀くんにはそう感じてます。今まで一言も話した事なかったのにね。
  でも、そういうのはわかるものだね、人は。

   *   *   *   *   *   *   *   *   *

一:余分な物が何もない…、自分が飲食店を、すすきのはらの中で月明かりだけでやるような(笑)そういう居酒屋やりたかったけど
直:前衛的だねー(笑)
一:それはやっぱねえ(笑)保健所とか全部通らないんで
直:一紀くん、この本店つくって、自分としては出来というか、これからどんどん、店って育てていくものだと思うんですけど、
  まずスタート台に立ったときに、自分の思い描いていた「出来」に達してるんですか?
一:それは達してますね。亮陽くんのおかげさまで。直喜くんの音響(お店のBGM)も。
  びっくりしたのが、自分の中には「魁」っていうお店の音楽があるんですよ、自分の店はこういう、っていう。
  それをこの建物をパッと一回見ただけで直喜くんが全部。まさに自分の理想的な音を、
  それを超えるものを次から次へと…。本当に涙がでちゃう…
摩:そうそう、そういうとき涙がでちゃうよねー!!
一:iPod もらって、CDもいただいて、帰りに車でそれを聞きながら…
  ちょうどその日終わったのが遅くって、明け方の富士山がちょうど見え始めた頃に
  帰って来たんですよ。その日だけもうなんか、すごい力を感じて、その音響から…。
  富士山を見ながらなんかもう涙が出て来ちゃって。ちょうど『My Way』が流れてて。
直:嬉しいなあー。
  でもやっぱりそれってすごくある、この「箱」にぴったり合うものってある。
  それは一紀くんの想いが詰まれば詰まるほど、多分みんなはそれを感じて、こうしよう、っていうふうに…。
  やっぱり一紀くんじゃなかったら、できなかったものだと思うんですよね。
  俺もただ音楽をやった、とかっていうのでも、一紀くんじゃなかったら俺絶対やらないです。
  一紀くんって人を知ってるからやりたい、ってなるし。
一:ありがたいことです…
直:俺も玉井さんのイベントをやったときに(前述、ホトリニテ1月のイベント)実際、実験的すぎるっていうか…自分の(ホトリニテの)食堂で  (魁の一紀くんが)料理を出して、って、難しい話を一紀くんにしたときにも、始めからちゃんと聞いてくれるような姿勢でいたし。
  「ああ、絶対この人ならついて行こう」っていう気持ちでいたから。 それやっぱみんな言いますよね。
  この(お店の)雰囲気出すっていうのは、場所が良くても人が悪かったら場所が悪くなるしね。
  それはやっぱり「町」だったり…にも通じるし。
  さっき、樹海に行って来たんですけど、富士風穴見に…。そのあとで人の想いってやっぱり残るっていう話を…
  人の想いが大きければ大きいほど、例えば、戦争になったりする、ってことを摩矢子さんが言ったんですよね。
  人の憎しみが多かったりとか…って。
  でも、そのことって本当に、まさにそれで、町とかも人の、この町は「自分の町、住んでる町だ。いい、とか、
  この町はすごしやすいから好きだ」っていう気持ちが強ければ強いほど、多分、町ってどんどん良くなる。
  町ってすごく、無機的、っていうか、概念みたいなというか…町という形はあるんだけど、
  想いが景観とかを形成してると思ってるんで、それはそうだな、って…。
  京都とかも認識が高いから、ちょっとゴミがあったらみんなで掃こう、
  とかっていうのがあるから景観が崩されないでいる、っていうのは強く感じるから。
  こないだ、同時代フォーラム(宿ホトリニテで毎月1回山梨県在住の様々なジャンルの人を2名招待して行われる対談形式のフォーラム)に
  出てくれる菅沼さんという建築家の人と魁に一緒に来て、帰ったあとに、
  「一紀くんっていう人が、この店をやることで、多分、この町は変わって行くよね」って。
  菅沼さんは場所と建築と人の関係をずっと探ってて、いろんな町とか都市とかに行ってて…、で、やっぱりそういうことを言ってたんだよね。
  すごく重要だなって思う。
摩:それは直喜くんがホトリニテをやっていることでも変わるよね。それぞれがそれぞれにやっている。それはすごく感じます。
  実際変わるからね。
幹:藤野もそうやって、みんなに藤野が好き、っていうパワーがあってすごい…
直:それはあるねー。
幹:盛り上がってるんだろうなって。
直:そうそう。この中の文章にもあった…

  と、ここで直喜くんが持って来ていた、鎌田さんがデザインを手がけている
  「フジノぼん」(藤野に移住してきたライターの平川まんぼうさんが製作の中心になって作っている
  藤野のひと・もの・ことを集めたミニコミ誌。A5版モノクロ34p、現在3号まで発行)をみんなで見ました。


一:(デザインが)センスいいですね、飾らない…
直:飾ってないよね。自然体な感じがいい。
一:それはほんとにかっこいい。

ここでしばらく、お互いの話、鎌田さんと大倉の最初の出会いや、直喜くんと一紀くんとの出会いの話になりました。
ほんとうにみんな、奇跡のように出会い、繋がっているのです。


一:そういう縁、目に見えない縁っていうか、そういうのは必ず、ね、
一同:あるよねー。
摩:会ってる回数とか時間じゃないものがあるよね。
直:うん。実際、俺、一紀くんと接したのはここ最近ぐらいですよね。
一:ほんと、そうなんです。
摩:え?そうなの?
一:亮陽くんと直喜くんが(小学校からの)幼なじみで。
直:(一紀くんとは)玉井さんとのイベントやったときぐらいから…まあ、前から知ってたんですけどね。
一:お店に一、二回来てくれた感じ、で、直喜くんのイベントにたまに行かせてもらったり、って感じで…
直:そんなに頻繁に話をしたこととかはなかったんですよね。
  で、魁に、玉井さんのイベントで「ぜひこういうことを(料理を)やっていただけないでしょうか」って感じで頼みにいってからだね。
  だから今言ったその、時間とかじゃないんだよね。過ごした時間が大事とかじゃなくて…。
  俺はすごく一紀くんがやってることとかやろうとしていることとか、その心意気、もう、職人さんだから。
  心意気にすごく共感するっていうか。
  だから、ずっと小学校から仲のいい友達もいるけど、それとまた別に、一気に共感しあえる人、っていう…。
一:ちょうど今も流れてる…(店内のBGMを)直喜くんから、この店へのお祝いと言ってiPodをプレゼントしてもらったんですけど、
  そのときに手紙が入っていて、書いてあった言葉が…「末長いお付き合いをしていきましょう」っていうような言葉がか書いてあって…
  ほんとにジーンときちゃって…。
直:でもやっぱり、そういう人にじゃないと書けないっていうか。そういう人に対してじゃないと…
一:やっぱり人間、「直感力」っていうか、そういったもので、会って、言葉はそんなに深く交わさなくても
  「あ、この人間とは長い付き合いになるな」っていうのを…
直・摩:あるある!絶対にあるねー!うん。
摩:ほんとにある。会った瞬間わかるよね。
一:それは伊藤兄弟(亮陽くんとお兄さんの泰蔵くん)がそんな感じで。すごい素敵な方で。
  すごい透明感があるような感じの、不思議な感じの人です。
直:いるだけで場がすごいいい雰囲気になる、っていうのがあるんですよね。
一:その人が一人いるだけでなんか安心。
直:安心する。その空気が安心する。
一:空間がホッとするような…。彼も口数は決して多いタイプじゃないんですけど、いるだけでそういう力を持ってるんですよね。
直:場が和むんですよねすごい…そういうのがいい。

   *   *   *   *   *   *   *   *   *

直:みなさんに聞きたいんですけど、出会いを作って…、出会う確率が高くなるといいものだけじゃなくて悪いものもあったりするでしょ?
  この人の出会いちょっとダメだったかなとか、ま、そこで勉強になるんだけど、そういうときはどうしてんの?
摩:それはねー…
直:この人とは出会わなかった方が良かったかなっていう…
摩:多分、集団の中で一緒にいなくていい縁だったらすぐやめると思う、それは。
直:それは自分から切る?
摩:自分から切るっていうか、”自然現象”。
直:自然に切れていくっていう?
摩:お互いに。だけど集団の中で、例えばいるじゃない?クラスメイトの中でどうしたってこの人と性格合わないっていう人いるじゃない?
  そういう人はすごく必要な人だと思う。
一:ほんとにそうですね、そのとおり。
摩:その人の中でいい面も悪い面もいっぱい見えたりするじゃない?だけど全部それは自分自身の中にもあるから気がつくものだと思う。
  だから、自然現象で離れていくとき以外は、なんでこういうところで違和感を感じるのかっていうことと…
直:それは残しとくの?自分の中に
摩:ううん、残すんじゃなくて、その原因はちゃんと観ようとする、私は。
直:ああ、なんでこの人にこういうふうに思ったのか、っていう
摩:そう。それは自分の中のどういう面からその人に対してそういう感覚を持つのかっていうことを観ようとする、私は。
直:あぁー…なるほどね。それは何て言うのかな、言葉で言ったら”共感”だったりするわけでしょ?共感したいとかそういうんじゃなくて、
  こう、個別な共感というか…
摩:あー、共感って言っても近い…いや…気付きたいというか…。自分がもっと色々な事に。
直:自分の気付き?
摩:気が付いた上で、変えていかなければいけない自分の部分は変えて行くべきだと思う。そのときに共感が必要だったり…  
  んー、わかんない、ちょっとうまく言えないな…。
  でも、同じ集団の中にどうしても合わないなって人がいたら、それはものすごく大切な関係だと思う。
幹:”気付く”っていうこと…。気付くと消える。
  「ああ」って気付いて、自分のこういう部分が反映されてるんだって気付いたときに、その人、自然といなくなる。なぜか(笑)
  あれ?って、それから会わなくなったりする。それまでは会ってるんだけど、
  「ああ、あの人のイヤな部分って自分のこういう所だったんだな」って気付いたら、あんまり会わなくなる。
  それまでは「気付け気付け~」っていって、よく会うんだけど、気付くと、あ、あんまり会わないな、って…。
摩:会い続けなきゃいけない関係だったとしても全く気にならなくなったりね。
直:一紀くんもお店やってて、不特定多数を相手にしなきゃいけないから、いい人も来るし悪い人も来るよね?
  そういう対処の仕方を聞きたいんですよね。
一:対処の仕方…?
直:とりあえず全部受け止めよう、っていう気持ちでお店をやるのか、どうなのかな。
一:基本的に流してる、みたいな。受け入れもせずに、勝手に通り過ぎていく、みたいな…自分の中に入れない、っていうか…何て言うのかな…
直:今さっき摩矢子さんの話にうなずいたのは、なんで?
一:それは消えていくっていう…それはやっぱ、うなずいたっていうか…、もうそういう”自然現象”っていうか。
直:ああ、いいですねえ、”自然現象”。だからもう、一紀くんの中で今”自然現象”って言ったけど、
  ”どうにも、どうにでもならないこと”っていうのを  すごくわかってる、ような感じがしたんです。
一:どうにでもならないこと?
直:例えば、「都会」っていうイメージと「大自然」っていうイメージがあったら、
  都会って「これはしちゃいけない」とか「ここにゴミを捨てないでください」とかって人間が決める事が多い気がするのね。
  でも大自然に向かったら「台風がここに来ちゃいけない」なんてできないし。
  そういうものをお客さんとして捉えてるっていう感じを受けたのね。
一:ちょっと難しい表現でちょっと~~(笑)
直:だから、自分の意志が通じないっていう、お客さんのメタファー、台風というメタファー。比喩というか。
  どうにでもならないことを識ってる人間ってやっぱ強いんですよね、俺が出会ってきたなかで。強い人間だなと思うんですよね。
  自分の思い通りにいかないからピーピー騒ぐ人とかいるじゃないですか、なんであなたこんなことできないのよ、とか。
  でもそんなの、自分と全く違う人間がいる、ってことを大前提に考えれば、
  「共感」っていうのも、自分と違うから「共感」っていう言葉が生まれる。
  この部分は共感できる、この部分は共感できないとかね、そういう感じ。
摩:共感できない部分に気が付くことも大事だと思う。そこはなんかわからないよ、っていうことを
  ちゃんと相手に言える関係、っていうのもまたいい、それも”共感”だと思う。
直:そうだね、相手をわかる、ってことに関してはね。そういうのは一紀くんはやっぱり言うんですか?
  例えば酔ったお客さんがわからないことを言ってきて、「それはだめだ、帰れ」みたいなこと言うんですか?
摩:言わなそうだけど…
直:そこはもう流すの?
一:俺に言うぶんには勝手に言ってどうぞって感じですけど、他のお客さんに迷惑をかける場合は強制的に…
直:強く言うんですか?
一:いや、申し訳ないですけど、って
直:で、言う事聞くんですか?
一:いや、聞かせるように
直:あー。一紀くん怒ったら怖そうですもんね。
一:でも、飲食のお店自分で始めて8年ぐらい経つんですけど、
  ほんとにそういう話のわからないお客さんっていうのは今までいなかったかな、って。
  逆にこの店に来れば、すごい楽しく…そういうトゲトゲしさがなくなる何かがあるのかな、とか…
直:ああ、それはあるねー。なくなる何か…。いい空間…、いい”箱”だね。
一:店の入り口小さいじゃないですか。あれはやっぱり日本の茶室的な、そういう…
直:にじりを意識して…
一:この箱に入った瞬間、権力も身分も何も関係なく
直:素晴らしい!!
一:全員がフラットですよ、と。ちょっと頭こうやって(低い姿勢になって)くぐるじゃないですか、どんな権力持ってる人でも。
  やっぱり自分が本当にやりたかったのが、”銭湯”のような
直:”裸の付き合い”みたいな感じですか?
一:身分も何も関係なく、銭湯って、みんなが同じ箱で、平等で
直:からだを洗う、とか…
一;そこでは…。そういう箱を作りたくって。
直:素晴らしい…。なるほど…。けっこう、来るお客さん見てると、年輩の方もいるし若い子もいる、
  その、どのジャンルにも通じるお店を作れるっていいな…。
一:まさに銭湯なんですよ。そういう店作りを。
直:その言葉を聞いてすごく納得したっていうか。現代の千利休ですね(笑)”富士吉田の千利休”ってあだ名をつける?
一:千利休だったら、もう一人いるじゃないですか、そういう、茶室を作った…名前がちょっとわからない…
直:三人いるんですよ、たしか。
一:斬新な人で。割った食器をまたくっつけてもっと違う物を作るっていう…自分はそっち寄りかな、みたいな(笑)。斬新な…

   *   *   *   *   *   *   *   *   *

幹:(魁のお店作りは)お客さんを迎えるところから作っている…気持ちから、店を入るところから作ったんだな、って。  
  私がインスタレーションを作るときっていうのは、導線に物語を置くのをすごく大事にするんですよ。
  行きたくなるじゃないですか…「この先はどうなってるのかな」っていうのを置いとくと。(魁も)入り口がそういう感じがして。   
直:そういうの意識してやっぱり作ってるの?ここを作るときって全部まかせたわけじゃないですよね、亮陽くんに
一:全部ほとんど、今回は、俺のデザインで。
  逆に亮陽くんと泰蔵くんは自分を持ってる人たちだから、いつも任せられて自分達でやる人たちだけど、多分はじめて…。
直:ここはこうして、っていうのを…
一:でも、普通の大工さんだったら伝わらなかったな、ってのはすごい…
直:うん、それはある。色んなものを見てるんですものね、亮陽くんちは。
一:ほんとに、さっきの直喜くんと同じように、音楽を、この店をパッと見ただけで僕の理想の音響を作っていただいたのと一緒で、
  亮陽くんもですよ。僕がパッと言ったら理解してくれて。
摩:そういう関係性の人も縁だと思う。私が5月にソロ公演(2010年5月の舞踏ソロ公演『明るさの淵』)をやったときも、
  チラシのデザイナー、フォトグラファー、衣裳の友達もそうだったの。自分のイメージを”1”言ったら100倍以上にして
直:返してくれるの?
摩:さらにいっぱい返して教えてくれる。あー、そっか、そういうことかーって。
  そうするとずっと、友達たちは公演のときも伴走者という感じがする。
  その人が教えてくれたから、今自分がいる、という。直喜くんもそうだったよ。
  5月の公演のときに直喜くんに、「私はこういう音を自分で録ってみたいんだけど、いい機材を教えて」って電話でパパッと話したら、
  「だったらこれとこれ」って教えてくれて。で、私はなんで直喜くんは”1”言ったイメージを100倍以上にして…電話で伝えただけで。
  それにふさわしい以上にさらにプラスαがあって!その録音機材を使って自分で試してみるとさらに100ぐらいの気付きが返って来るという…
一:そういう人ですよね。
摩:そういう人。
一:ほんとにそうですよね。
摩:きっと亮陽くんもそういう人だと思う。
  私もそういう人といっぱい出会って来てるけど、それはやっぱり誰にでもできることじゃないなと思って。
一:生まれ持ったなにか、天才的なものを持ってる人なんですよね。
摩;そうそう。ほんとにすごいよ。
一:ほんとに知識がある。(直喜くんは)料理人である自分以上に、この豆腐は美味しいですよとかいろいろ、この味噌は、とか、
  俺より知ってて(笑)すごいんですよー。
直:でもやっぱりわかる人じゃないと言えないっていうか。一紀くんも味のことわかるし。
  だから、自分はこういう味を思って、これ美味しいんですけどどうですか、って言うとやっぱ反応が返って来る。
  やっぱ反応があるってすごくいいな。自分に返って来る反応が。
一:さっきの千利休じゃないですけど、(直喜くんは)総合アーティストかな、っていう…。
  ひとつの分野、もちろん音響とか飛び出てすごいですけど、千利休もまさにその総合アーティストであらゆる面で飛び出てたっていう、
  直喜くんはそういう感じの人…。

一:あ!亮陽くん来ました!待ってました!
亮陽(以下:亮):どーも、すんませーん。遅くなりましたー!



  ookina1
    直:遅いね~(笑)
亮:遅くなりました、すいませーん。事故ったやつがいてね。
直:さっそく人のせいにするクセが出たね(笑)メールでは渋滞遅れる、って。
  なんかちがうし(笑)
亮:渋滞渋滞。…もいっこ先の入り口で、入れば、良かった、みたいな。

この日は都内での仕事だった大工の伊藤亮陽くんが到着。
さっそくお酒を注文したり…一紀くんと直喜くんの話のとおり、
亮陽くんが来ると場の空気が明るくなって、ふわっと丸く和むようです。


一:日本酒のおすすめを一本。
直:あれ?亮陽くん車でしょ?
亮:ちょっとだけ飲んで、みたいな…(笑)。
  すんませんなんか遅くなっちゃって。事故った野郎がいまして~
直:すんませんとか言ってるけどあやまる気完全にないから(笑)思ってないの、
  得意分野ですよ(笑)だいたい続けていうときはね~
一:ま、みんな揃ったところで乾杯しましょ(笑)
摩:今日はありがとうございます~
  亮:おめでとうございまーす
一同:カンパーイ!
直:一紀くんもう二杯目いってるから
亮:えぇ!?何杯も飲んでるみたいなかんじですよ?
一:迎え酒で二日酔い治っちゃって

   *   *   *   *   *   *   *   *   *

一:亮陽くんともここ最近でこういうふうに連絡取り合うようになって。
直:そうなんですか!?
一:お互い顔は知ってたんだけど、飲みに行ったりとかはしたことなくて。そこまで接点なかったんだけど、
  この建物を(建てるときに)自分の直感で、この兄弟(亮陽くんと兄の泰蔵くん)にお願いしたいなっていうのがあったんですよね。
亮:そうですよねーびっくりですよー。そんな任せちゃっていいの?って感じでしたねー(笑)いいのー?って感じで(笑)
  多分それほどうちの情報もなく、直感で(笑)
直:でもね、ほんと、言ってたもん。亮陽くんいないとき一紀くんは、「俺、亮陽くんちに任せてるから安心してる」って。
亮:そう、すごいよねー(笑)ここをやって初めて「工期」とか「納期」って言葉を知ったの(笑)、その大切さを知った(笑)。
摩:あ!!(日本酒をこぼす)

店内のBGM:♪おっちょこちょいのちょい~おっちょこちょいのちょい~(明治大正時代に流行った「猫ぢゃ猫ぢゃ」という曲/歌:うめ吉)

亮:おっちょこちょいのちょい~♪って言ってますよ(笑)
摩:聴こえてる!!

直喜くん選曲のBGMは不思議なほどお店全体にも一人一人にもぴったりと合うのです。それにしてもこのタイミングの良さ…!


直:あれ、どこまで話してたんだっけ。
摩:工期とか納期とか。
亮:今まで厳しい世界にいなかったんで
直:甘ったれてて(笑)
亮:甘ったれて育って来たんで(笑)
一:自分もそういう、商売の知識を全く知らないで始めた人間だから、まさに俺の店にはふさわしいかなと
亮:(笑)
一:型破りな
亮:(笑)ありがたいですねー

魁の料理!とても美味しいです!ビール、ワインに日本酒、お刺身やズワイガニのコロッケをいただきながら、対話の宴は続きます。

直:これも一紀くんの創作ですか?
一:創作で。
直:料理する人は、ちゃんと料理ができる人を雇うわけですか?
一:いや、全くできない人間から育て上げていくんです。
直:へえー。一紀くんが雇う人って若い子も多いじゃないですか、活気が出るような感じの人を選ぶんですか?
一:いや、面接今までして、一回も落としたことなくって
直:えぇ~!
一:印象が悪くても、その人間のいいとこ見つけてやろう、みたいな。
直:おおー!
一:でもそこでやっぱり合わない人間は、俺がやめさせるんじゃなくて
  勝手に、多分、自分でやめてく、さっき言ったように自然に消えてく、じゃないですけど…
直:その器だよねー。その器がないとできないよね。俺なんか多分、面接から「ダメです」とか言っちゃうと思うんです。
  全部、まず受け入れる、って姿勢がなかなかできないよね。

話題は、お互いの紹介や仕事の話まで、多岐に渡っていきます…

摩:舞踏は普通には馴染みのないものなのかな、とも思うんだけど、私は踊り手同士で会ったりすると
  踊りの話ばっかり何時間でもしてることもあって、でもそれは、踊りを媒体にして、”生き方”の話をしているんだなと。
  そういうことのような気がしているから、だから、踊りとか、色々なことは、別々のものになっちゃいけないと…。
  生きていることとかけ離れていないということをどのように…
直:伝わるか?
摩:うん、伝わるとか、繋げていけるだろうかということを考えるなあ。
亮:何も考えないでいくんですよねー?本番前は
摩:考えちゃうとだいたいダメだよねー…
直:亮陽くんはじゃあ例えばさ、この魁を…
亮:何も考えないで仕事始める、とか、言おうとした(笑)?
直:でしょ?(笑)いや、考えるんでしょ。やっぱ悩むの?
亮:え?なやむ?
直:こんな大役俺にできんのかなあ、みたいな
亮:なやむでしょう、なやむでしょー。
直:でも培ってる”直感”ってあるじゃない、亮陽くんが
亮:いやいやいや~、やり始めなきゃわかんない、って感じがする。
摩:おお~
亮:やり始めてなんとなくわかってくる。最初からこのー、考えて、っていうのはできないよね、できない。
  だいたい普通はそうしないと納得しないけど、お客さん的には。どうなんですか?みたいな。一紀くんもすっげー不安だったと思うけど(笑)
直:でも信用してたんですよねー。
亮:そう、そんなん稀だよね、稀ですよ~
直:でも、お客さん的に一紀くんみたいな人がいるわけじゃないじゃん。
亮:いるわけじゃないね
直:みんなさ、ちゃんと、はっきり、これをって、模型を作ってさ
亮:そうそう、模型通りに…
直:原型がほしい、っていうさ…。
一:でも、(魁の建築で)依頼してる反面こんだけ口うるさかった(笑)依頼主は今までいなかったと思うから(笑)
亮:いやでも、全然、任せてる方が大半占めてて。ほんのちょっとだけだよ、その中の。
  9割お任せで1割こだわるところだけこだわって、っていうだけだと思う。ほとんどお任せですよー
一:いや、相当口うるさかったと(笑)泰蔵くんの話ではね(笑)

BGM:野球~す~るなら こういう具合にしやしゃんせ♪(「野球けん」歌:うめ吉)

一:この選曲が、最高ですね(笑)。
直:この曲も、魁の音楽を何にしようかって、インターネットで色々探して、昔の江戸の曲だとか…。一紀くんが言ってた人が流れるイメージ、
  江戸ってこう、流れる文化だったから、そういうイメージに近いのはどれかな、って探してこれに行き着いて。
一:不思議と、この曲流れると、一気に(お客さんがお酒を注文するチャイムが)ピンコンピンコーン!ですよ!
  急に同時に、お酒飲み出すんですよ(笑)
亮:いやー、すごいと思ったよ。直喜くんの選んだ曲を、
一:(魁を)オープンする前に泰蔵くんと亮陽くんと軽く飲んだんですよ、そのときに
亮:流した瞬間、完成したなって感じだった。さすが、って感じだった。
一:そんなにこったのをやってるわけじゃないけど、ほんとに、
亮:合わせてるよね
一:お客さんのニーズに合わせてるような
直:でも、ここ最近ですよ、ほんとに、色んな人に会って…。
  昔は自分の好きなのしか聴かないし、人にも提供しないし、っていう感じだったけど、やっぱ、そうじゃないなーって。
亮:すごいっすよね。大事ですよね、BGM。大事だと思った。
幹:こういう曲って普段、人は聴かないわけじゃないですか。でもやっぱり、なんか、流れてるよね
一:まず、おじさん達がすごく喜ぶんですよね。
幹:この前…小沢健二が最近、13年ぶりにライブをやったんですよ、で、新曲ですって言って…
  まあ、その前に、”日本人とかいろんな国の人にベーシックに感じる曲っていうのが、国それぞれにある”っていう話をして、
  新曲で、聴いて、ニンマリしていただけると嬉しいです、って言ってやったのが『シッカショ節』っていう音頭だったんだって(笑)
  あの渋谷系のお洒落だった人が。ほんとに、こういう感じの音頭で。
  でも、やっぱりその、ベーシックなところに響くっていうのがこういうのね、って。
亮:演歌が心響くようになったらいっちょまえ、ってことで。日本人として(笑)
直:今、名言だね(笑)
亮:なかなか聴けないですけどね~
幹:こぶしとかね。なかなか聴かないけど、やっぱりある
亮:あるんでしょうね~
摩:私いま、農業で、小松菜を出荷する仕事のアルバイトをしてるんだけど、毎日大量に小松菜があって、袋詰めするために、何グラムって計って   工場のレーンに乗せて流していく仕事で。有線で音楽が流れてるんだけど、
  工場の流れに合う速度の曲って、わりと最近のJ-POPみたいな曲なんだよね。そういう曲がバーッて流れてると仕事もバーッてやってる。
  それがこないだ、うっかり、テレサ・テンの曲の有線が流れちゃったんだよ(笑)。
  そのとたんに、『好きなんだけど、手が動きません!』みたいな(笑)
  今のそういう、いわゆる、J-POPのような曲が、今の社会の速度の中で出てきた一つの流れだとしたらさ、
  テレサ・テンの歌で「川の流れのように」とか「人生いろいろ」とか流れて来るとなんか立ち止まっちゃうんだよね。
  聴いちゃう。「あ。」みたいな。仕事やめて昼だけど飲みに行こうかな、昼酒、みたいな(笑)。
亮:けだるくなりますよね~
摩:(笑)で、それでこう、色々思うところがあってさ。みんなさ、社会の中で、社会と無関係ではいられないじゃない?
  そういう中で、社会の流れにそのまま乗って流れて行くのか、色んな事があるけど「オレはこうだよ!」って言うのか、っていうこととかさ。
  テレサはいいけど、手が動きませんから~~ね。
亮:回転率を上げる為に曲を変えたりするんですよね、居酒屋とかで
摩:そうなんだよね。それで、そういうことを思ってたときに、
  すごいラッシュの時間帯に渋谷駅でJRから井の頭線に乗り換えをしたときがあって、
  ものすごい人混みで。その通路、頭上に、岡本太郎の壁画(『明日の神話』)があるじゃない?それをパッとみたときに、
  この人混みとか雑踏を超越した叫びみたいなものがあるなあ、ここに、とか思って。テレサ・テンの曲に手が止まる自分を思い出してさ。
  何が、今、自分がやるべきことか、って、問い直されてるような気がした、うん。
  色んな事がある中で、何をやっていくことが舞台の使命なのだろうとか。
  いっぱい、色んな事があればあるほど、それでも自分の内面を絶対に手放さないようにして。
  「私はこうなんだ」っていうことを叫び続けていくことって…そういうことが大切なんじゃないか、って。
  
   *   *   *   *   *   *   *   *   *

亮:直喜くんの行動力はすごいと思いますよ、僕は。
摩:すごいよ
亮:すごいですよね
摩:あ、この人、って思ったらその人に自分からコンタクトしてって、同時代フォーラムとかも…?
直:そうだね。
摩:最初から知り合いじゃないんでしょ?自分からいくんでしょ?
直:自分からいくね。
亮:ですよね
摩:でしょ、そこだよねー。
亮:すごいと思いますよ。やっぱ俺は多分自分好き、でしょ(笑)自分好き代表、みたいな感じだけど、
  完全に(直喜くんは)”人”に興味がある。
直:人に興味がある。俺はね。
亮:そう、そこがえらい。
摩:そうだよねー
亮:吸収しようとしてるじゃん、完全に、色んな人のやつを。それすごいよね。
摩:人の中にいいところを見つけられるのが、直喜くんのいいところなんだよね。
亮:そうっすよね。純粋ですよ。純粋さの証拠だな。そう思った。
  人が好きな人っていうのは、ほんと、純粋だなって思って。人を見る目もあるし。

   *   *   *   *   *   *   *   *   *

亮:うちの兄貴(泰蔵くん)が誰かを雇ったりすると、使えない、って思う奴がいるんですよね、たまにいて。
  で、兄が言ってたのは「使えない奴ってのは世間的に使えない奴なんじゃなくて、自分がこいつをうまく使えない、っていう意味なんだ」
  っていうようなことを言ってました。
一:泰蔵くん、名言ですねー。
直・摩:名言だねー。
一:この前二人で飲んだときに、「どんな人間にもちゃんと逃げ道を作ってやるのが、その人の器量だ」って。
直:すごい言葉っすねー。泰蔵くんやっぱ深いわ。
一:心に響く一言でしたね。
亮:親分はいろいろ考えてるよ。
幹:上に立つ人は違うな~。
一:だから、全てを悪い悪い、決めつけないで…
幹:別のとこではすごい役に立つ人、ただ、ここにちょっと合わなかったっていう…
一:戦国武将で武田信玄って、山梨県の武将が、そういう武将だったんですよ。
  決めつけずに、人間にはそれぞれ個性があるから、それに見合ったちゃんと…
幹:場所がある。
一:使い方を…
幹:それを見るのが上の人
亮:今、でかい企業とかでも、ちょっと脳に障害があって色んなことを一気にできない人で一個のことに集中しちゃう、みたいな人を
  わざと雇って、猶予を与えて、一つの事を集中してやってくれ、って。
  眠たくなったら寝ていい、って。だからその、特別枠みたいな感じで雇ったりしてるんだって。
一:武田信玄がやったことは、いつも本当に無愛想で悲しい顔をしてる、自分の下がいたんですよ。
  で、「お前は、付き合いがある相手方の国の葬儀に行け」って。悲しい顔だから葬式に。
一同:笑!
一:逆にそっちの国のほうが、「ああ、うちのために武田側はこんなにも悲しんでくれて」って
一同:笑!すごいねー!武田信玄!
亮:そいつをずっと養っていくってのも大変ですけどね(笑)いつも悲しい顔してお前は~、って(笑)
一:信玄の言葉で、”人は山なり…”とか…「城よりなにより、人が一番大切だ」っていう言葉があるんですよ。
直:そうですよね。そこなんですよね。
直・亮:財産だね。
一:ある人が前に言ってた言葉なんですけど、これから100年200年時が経っていくと、
  人間の権力、ですか、そういったものは一切なくなる時代が来る。
  そこにあるのは『人間力』だけが残る時代が来る、みたいなことを。
一同:(うなずく)
幹:私もフリーでデザイナーしてると、人の繋がりしか仕事を得るすべはないから
亮:そうですよね。
幹:それが一番大事、みたいになってくる。
直:基本それだ、ってことですよね。
幹:それがなかったらね…。それ以上に大事なものはない。

   *   *   *   *   *   *   *   *   *

直:嬉しいよね。富士吉田に魁があって、甲府の人も「魁、魁」って言うんですよ。「文化的な拠点」みたいに。
亮:おぉー。
直:そういうのに関われるのって嬉しいよね。
亮:嬉しい嬉しい嬉しい。
一:また亮陽くん心にもない事を!
一同:笑!
幹:地方にこういうところがあるのってすごくいいですよね。
直:すごい、いいですよ。
一:みんな東京に憧れて東京のお店を真似したりとか、そういうの大嫌いで。
  逆に、僕はこの富士山の麓から東京のいろんなとこが影響受けるような店にしていきたいってのがすごいありますね。
  いや、東京だけじゃなく、世界から。

お店のBGMにはイルカの「なごり雪」のアレンジ(「ナゴリユキ」歌:KAT)が流れています。
もうすぐ閉店の時間。一紀くんは仕事に戻ります。


亮:花見の季節には…桜が咲いてるときみた?ここで…(魁本店の入口の両脇には大きな桜の木が二つある、
  桜が咲く季節には二階の大広間からもライトアップされた桜をみることができる)
直:みた。すごい綺麗だった。ここから見るとすごい綺麗だよね。
亮:オープン前に、一紀くんと泰蔵くんと三人で飲んだときに…。桜がもう、ほぼ満開で。まだ寒くて雪が降ったのね…。
  雪と桜が一緒に…。すごい景色だったよ。
  それで、次の日ニュースで、40年ぶりらしいのね、桜と雪が一緒に見えるのは40年ぶりですって言ってて。
  この家(魁のお店に改築する前の古民家)が空いてたのも、人がいなくなってから40年ちょうど…みたいな感じで(笑)
直:すごいねー!ちょっと鳥肌立つね!
亮:鳥肌立ったね(笑)。ほんと、わぁーって思って。
直:息抜きをさせて、40年ぶりの”自然現象”でここに来た…。鳥肌立つねえ。思いっきり、作った側としてはほんと、鳥肌立つね…
亮;ほんと、ほんとだよ

魁のスタッフの皆さん:おつかれさまですー!
直・亮・幹・摩:おつかれさまです!美味しかったです!ありがとうございましたー!

スタッフの皆さん、一人一人が帰りにご挨拶に来てくれました。


直:えらいよね、こういうところが一紀くんの人柄、出るんだよね。
亮:ほんとそうなんだよねー。
摩:全部出るんだよねー。
直:言いに来なくてもいいことなのに…
亮:人柄ですね。
摩:最終的には人柄なんだよね。
亮:人柄ですよ。



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    一:いい酒ですね
亮:美味しいですねー
一:いや、お酒が旨い、じゃなくて、こういう、この場が。この酒の、飲む席が。
直:わかれよー(笑)!
亮:わかってますよー(笑)!
一:(笑)二日酔いも治りましたわ

店内は、私たち五人だけになりました。
ここ二階の座敷は、各テーブルが一部屋ずつの個室にもなっているのですが、実は…


部屋と部屋とは、壁で分けられているのではないのです。「襖」なのです。
一紀くんが襖を全部開けてくれました。
するとそこには…


直・亮・幹・摩:うわあ~~~~~~!いいですねーーーーーーーっ!!!
直:宴会場ですねえ!
 
隔てる物は、もう何もありません。全ての部屋も通路も一つに繋がりました。
全体が大きな一つの部屋となり、目の前に広がっています。ほっとする…懐かしくあたたかい感じ…。
そして、照明が生み出す光と闇。
やさしく息づいている陰影の美しさ…


摩:どこにいても、どんなところにあっても、魅力のあるところには人は来るよね。どこにいてもそうだけど、絶対、あるんだよ、自分の中に。
  それを持ってるか持ってないかだと思う。魅力があれば、どんなところにあっても、何時間かけてでも、人は来る。
亮:そうだよね、そう思った。
摩:それを、最初に内面の魅力でなくて外側を基準にしちゃうと全然違う。
  最初に内側から始めないと、工場の流れと同じで、どこまでも流されていっちゃうんだよね。
直:そうだね…
摩:流されて行くということもあるのかもしれないけど、(自分の内側に)そうじゃないものがあったら「そうじゃない!」って言ったらいい。
亮:直喜くんのところもいいよね。場所がけっこういいもんね、立地条件がいい。
一:直喜くんの部屋に行ったときに、すごい、いいですよね、削ぎ落とされた感じ…。
  物を付け加えていくことは誰でもしたがるんだけど、でも、どれだけ削ぎ落としていくかってことを、心がけている…
亮:そうそう。
亮:踊ってる最中は何かこう、考えないんですか?
摩:どれだけ削ぎ落としていくか、っていう方を…
亮:全く動かない、みたいなこともあるってことですか?
摩:はい
直:あるある
亮:そうっすよね、観ててちょっと不安になりますもんねー(笑)不安にさせよう、とも考えちゃだめってことですかね?
摩:それすらも考えないっていうか…
亮:こうやってもし、寝っころがって、動きません、みたいになったとするじゃないですか…寝ちゃわないですか(笑)?
摩:寝ないよー(笑)!!でもほんとに寝られたらうらやましいと思うよ(笑)
亮:寝ちゃったら…そりゃそうっすよね
直:それはほんとだよね(笑)
摩:うらやましいけど舞台でお金払ってほんとに寝てる人見ないじゃん(笑)
  だからさ、結局舞台で自然体の人を見るっていうのは、フィクションなんだよ。
  舞台でこの人寝てるみたいに見えるとか、全然考えてないふうに見えるっていうことを観に来てくれた人に(印象を)与えるとしたら、
  数千倍の色んな積み重ねがその前にあった上での、何も考えてなさのリアル。
直:そうだね
亮:俺がリフォーム頼まれて何もしないってことになっちゃうよね(笑)
摩:(笑)何気ない人を見てるんだったら電車に乗って前の人見てればいくらでも済むわけだよ。
  舞台でお金を払って観て、その人が舞台で何気なくみえる…それには数千倍ものことがあるよね…
直・亮:そうだそうだ
直:それがその人のセンスに繋がっていったりとか、感性だねー。
摩:でも私は気分やイメージが先行してしまうことがあって…。だから具体的にかたちにしている人はほんとにすごいな。
直:亮陽くんや一紀くんだったりね、
摩:直喜くんもそうだよ。公演の音響のことを、”1”聞いたら100にして教えてくれて。
亮:100教えられるってことはそれ以上、1000知ってるってことですもんね。専門家的には。この人に対しての、100、っていうことですもんね。
摩:私はソロ公演の稽古の間、本番直前になるまでの間はずーっと一人で稽古してて、
  そういう中で、自分が、自分が自分が、じゃなくって、そうじゃない、そうじゃないよ、って教えてくれるのは、
  ずっと私に100教えてくれる誰かの存在っていうのを感じずにはいられなくって、
  それは直喜くんだったり、チラシや衣裳を一緒に作ってくれた友達の存在が…
直:…の存在がでかい…
摩:そう。直喜くんもそういう存在でした。
亮:褒められてるよ!オファーをクリエイトする!クリエイターとして!
幹:一人でやってると、やっぱり、要求からちょっと上は出さないと、次の仕事、絶対来ないし。
亮:そうっすよねー。お金もらうからには喜ばれる方がいいですもんね。
幹:こうくるだろう、っていうののちょっと上をいかないと、お金にならない。
亮:実際の労働時間を普通は計算してやるんでしょうけど、もうちょっとやれば完全に喜んでもらえるんだろうな、
  って思うこともあるじゃないですか。
  でもそうすると、一日、二日延びて日当的にはアウトだ、っていうこと、でも、やっといた方がいいんですよね。結果的には。
幹:そう、あとあとね。
一:それを気付いた…ま、俺もそうなんですけど、亮陽くんは特別。それに気付かずに単なる金儲け、になっちゃうと…
亮:普通に雇われて給料でやってたら無理っすよね。何、利益のない事やってんの?って怒られますからねえ。
摩:それは自分が納得いくか、いかないか、ってこと?
亮:そうっすね。自己満足を、完全に自己満足したい、みたいな。おぉいいねぇ~みたいな(笑)
摩:そうだよね、みんなが「いい!」って言ってても、自分が納得いってなかったらアウトだし。

   *   *   *   *   *   *   *   *   *

亮:それと、やっぱり、一人の人間が考えた事より、いろんな人間が携わって色んな変更があって、っていう方が、いいものができる…
摩:できる!
亮:それもありですよね。一人で完成図完全に考えて持ち込んだとしても、予定しなかったような変更がぽーんとあったり、
  それで上手くいく、みたいな。結果的にいいものができる、っていうのもありですよね。
幹:来たことで、視点が変わるっていうの…あ、なんだ、ここがなかったからここがどうしてもできなかったんだ…っていうのが出来る。
  それがわかったのも最近だよ…人とやるってこと。ずーっと一人でフリーでやってたから、全部、自分でやらないと…って。
  だんだん、自分の力が、若さにまかせてやってた事が出来なくなってくると、だんだん頼ってきて。そういう知恵。
  みんな視線が違うから、そういう視線がいっぱいあったほうが面白いものができる。
亮:そうですよね。直喜くんはそういうのがもう最初から解っているっていうか、人のを吸収するのが…。
一:自分で生きてる、って思ったら大きな間違いで。生かされてるんですよね。
亮:そうですね。自分の役割がちょこっとあって
直:だから表現すること、ってのも、自分じゃない何かが…何かから生かされている…
摩:自分の想いからなのか、もっとでっかい…
直:でっかい何かなのか。



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  yorokobi   亮:一番嬉しいってのはどういう時ですか?やってんなー!っていうとき!
摩:それってさー、”自分が”ってのがいなくなってて
一同:ああー。
摩:私の場合で、舞台で言うと、自分が、ってのがなくなってて、
  そのときに観に来てくれた人たちが「あっ」ていうものを一人一人が
  それぞれに感じてくれたとき。それはイコール…、”いけた!”っていうときは、
  自分がこうしたい、っていうのじゃなくって、
  人が何かを感じてくれたかっていうところに…。
亮:そうですよねー。
一:亮陽くんは?
亮:そうすね、自分ではやったな、って、もし、思ったとするじゃないですか。
  相手が、すごい喜んでくれなければやっぱ、嬉しくないじゃないですか。
  そういうのがやっぱ根本にあるから、人がこう、一紀くんも本当に、頼んで良かった、
  って言ってくれたときが、一番いいんですよ。
直:おおー
亮:嬉しいじゃん。人が喜んでくれるのが一番嬉しいでしょ?
  そういうのが根本であって、そういうシステムになってんだな、と。
  生きがい、っていうか。
    それが生きがいになっていく。褒められるだけじゃなくって。
  感謝されるのが、一番気持ちいい。
一:じゃあオナニーとSEXみたいな
一同:あー。わかるわかる(笑)
一:自己満だけじゃなく、相手もよろこばせる…
幹:自分の気持ちいいとこと他人の気持ちいいとこが一緒になったときが
直:そうだね、一緒になったときが
幹:どっちも幸せになる
亮:そうだね、幸せになるし
直:それも名言だね、名言。亮陽くんは…
亮:自己満だよ(笑)。だから更に最後の一個だね。90何%自己満で、最後の何%かが相手がどーんと喜んでくれるっていうか。
  それが一気に100%まで基準だったことが1000%基準になった、と。
幹:実現する喜び、みたいな
亮:期待に応えるというか。
幹:ここを(魁の建築を)任せてくれた、その期待に…
亮:そうっすね。すごいな、と思います。任せてくれるっていうことが。
一:一生の中で相当の…
亮:一世一代のことっすよ
一:それはやっぱり亮陽くんの人間力が。
亮:いやー、そんなの普通できないっすよ。信じすぎ(笑)!
一:他の人には無理です、絶対無理。そこはやっぱり洞察力じゃないけど…
直:信じきるのがすごい。ほんとに色々、良いも悪いも色々経験して来た人じゃないとできない。
亮:俺、信じきれないなー(笑)
一:覚悟ができてんですよ。裏切られたら裏切られたで、ああ、それも勉強だなって。高い授業料払ったと
直・亮:覚悟、それほんとすごいですよ。
一:満点の星空をみたときに、人間なんていうものはどれだけの歴史があって…でも、宇宙の歴史にくらべたら…。
  それを、あーじゃない、こーじゃないって言ってる自分は、すごい、言うのは情けなくって…
亮:すごいと思う。”賭け”ですよ、俺とかに任せるっていうのは
一:人生博打ですね。博打ですけど、単なる無駄な博打はしない。全部、信用あっての賭けだから
幹:博打のほうが楽しい(笑)。いい博打をね。
亮:平成の博打打ちだ。
直:博打打ちの集まりだね。
亮:大本命に賭けなくちゃね。勝率を上げるって感じですね~
一:人間の生きてる時間なんてほんとに微々たるもので。その一日一日をどういう気持ちで…生きるのと、なあなあで生きるのと、全然それはね。
亮:早めにそういうのに気がついた方がいいっすよね。
一:人生、反省はあっても後悔はしたくないですよね。
直:反省をちゃんと前に向けるっていうことだよね…。でもほんとに全部受け入れる技量があるってすごいと思う。
一:いや、でも、ほんとに嫌いな奴は嫌いですよ。ほんとに嫌いなときはもう、戦争するか、みたいな(笑)



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    一:価値観がいきすぎると逆に孤独を感じるときがあると思うんですけど…
摩:私のベースにあるのは”孤独”ですね。それをどのように、
直:払拭する?
亮:人に合わせるってことですか?周りに合わせる?
摩:合わせない。どのように、自分の中に作ってしまった壁を、融かしていくのかっていう
  …壁って、できちゃうんだよ、自分の中に。
  それを、本当の自分の気持ちから離れないで、どのように…ということを…
亮:やっぱり、なんていうかな、舞踏をやってて、一般的にわかるようにするっていうこと
  ではないんですね?もっと上をいって、感動させる…?
摩:私が一番最初に踊りに来なくちゃならなかった理由って、自己救済だったの。
  でも何年かたって、踊りって、そうじゃないや、って気付いて。
  今まで踊りとかそれに関わる人たちにどれだけ助けられて救われて来たか、
  ってことを感じたときに、人と人との繋がりとか一体感をどれだけ求めてたか、
  っていう自分の孤独の根みたいなものに気付いて、
  その先に行こうと。その最中な気がする。
一:ものすごい強い人だと思いますよ。強いからこそ自問自答できるから、
  その葛藤がすごいんじゃないかな、って。
摩:その繰り返しなことが踊りに向かわせてる気がする。
    多分だけど、なんで踊りをやってるんですか、って聞かれたら、生きてくのがつらかったから、って言っちゃうと思う。
幹:多分、そこに同調した人(自分を指して)私。
  生きるためには表現するしかない、っていうところで私もやってた、ってところで出会っちゃったから(笑)
摩:最もその感じが出てたのが(鎌田さんと出会った)2002年ごろだったと思う(苦笑)そこに同調した鎌田さん…
幹:わかった(笑)。
直:でもそうやって繋がってったってことは…
幹:ちょうどいい具合に、どっちともが、そこから抜けて、ちがう方向に行こう、っていう頃。
摩:でも、そういった想いが強ければ強いほど、じゃあなんで?じゃあなんで?って、根っこの根っこの根っこを掘り下げていったら、
  すごい単純なことで「う~ん。みんなと一緒にいたかったからかも」っていう、すっごい単純、簡単なことだったなって。
幹:私は、世界からいつも自分が外れてるっていう感じがしていて。
摩:外れてるっていう孤独感のもとを辿れば、一緒にいたかったんだよね。
幹:ね
直:そうだよね…
一:みんなと一緒にいたいことは、人間であれば当たり前ですよ。
  だから、世間と外れてることを、逆に、喜ぶ生き方をしていったらいいんじゃないですか。
  同じロボットじゃないんだし…マニュアル通りに生きてる人間ほどつまんないものはないですよ。
  俺どんどんこれからは人生外れていこうかと思ってますよ(笑)
直・亮:もう外れてますよー(笑)
一:さらに外れますよ(笑)それは多分、自分が喜んでるのかもしれない。それで孤独を感じる面もあるんですけど、その反面、
亮:気持ちいいっすよね(笑)
一:ほんとに裏返しなんですよ。博打ですね。
幹:孤独な人同士が点で繋がってく、っていうのがすごい面白い。
一:ああ。
幹:高い山に、ポツ、ポツ、っている感じの人が、なんかこう、点で繋がっていく、っていう、その感覚が糸みたいにこう、なってて…。
  なあなあとかの関係じゃなくって、それぞれ、こう、高いところにいるけど、繋がってく。
  すごい高いところにアンテナ出してる人たちが繋がると、すごい高いところで繋がる。
一:それはもう、必然的になりますよね。多分、アンテナ張ってない人間とは繋がんないですし、周波数じゃないですけど、
  目に見えないそういうものって人間が発してるんですよ。全てのものが周波数を持ってて、
  それはやっぱり自分の発してる数値と近い人間が自ずと…。
  目にみえないそういう色んな力をあなどっちゃいけないし、それを感じようとする気持ちがあれば、
  どんどん人生は変わってくるんじゃないかな、って気がします。
亮:もっと面白く受け取って、
直:亮陽くんは逆に、ネガティブなことが来たらそのまま受け取らないで…?
亮:そうだね、面白く受け取る。何ていうの?どんな困難なことでも面白がる、ってことですよね、うん。
一:女の人と男の人と考え方違うかもしんないですけど、色々、試練ってあるじゃないですか、それが来たときに、その壁を乗り越えたときに、   どれだけの男になってるかなーっていう(笑)
直:それはある(笑)
亮:それですよね(笑)
一:だからどんどん壁があった方がいいですよ。
亮:それを楽しく行こうとするとね
一:ゲーム感覚じゃないですけど
亮:わかります~
一:あ、ありがたいな、って、自分の成長のためにそういうものが来たんだ、って
亮:そういうのを乗り越えられる人じゃないと、そういう試練が来ない。鍛えられると思って、試練が来てるんだ、って
一:そういう捉え方でいろんな障害を捉えれば
亮:見方が変わってきてその悩みも悩みじゃなくなって、来たね来たねー!みたいなね(笑)
一:それを早く気付けたんですよ、そういうことに。だから恵まれたかなー、って。
  選ばれた人間、って言葉がありますけど、そういう人には色々あるんですよ。
  試練は、それをどう捉えるかで全然…
亮:そうっすね。気分的に、っていうか、気の持ちよう
一:気持ちはそういうふうに思っててもつらいっすよ(笑)
一同:笑
一:まあ、それはそれでね。
亮:そういうふうに考えるしかない、ってことですかね(笑)
一:ほんとに死にそうになるくらいつらいことってたくさんあるじゃないですか、みんな生きてれば。
  そういう経験をしてきた人ほど人の気持ちもわかってやれたりする。
亮:そうなんですよね。話聞いたりとか。悲しみもわかるし。
一:歳は関係なく、深い、っていう人いるじゃないですか。
摩:関係ないよね。
一:そういう人は、きっと相当の、そういう壁を乗り越えて来た人なんですよね。

話は尽きることなく続きます。

魁という箱。
ここでは、あらゆる壁を取り払い、生きている、生かされていることの喜び、人にとって何が一番大切なものなのかがー
人から人へと伝わっていきます。面白く楽しく、強く優しく。


一:今日、この場で出逢ったのも、何億分以上の…もっとですよ。この縁を大事に繋げていきたいですね。

時刻は深夜0時をまわりました。
直喜くん、鎌田さん、大倉の三人はホトリニテへ。今宵は大団円、そろそろお開き…


一:亮陽くん、もう一軒いきますか(笑)?
亮:行きますか?開かないことにします(笑)?
一:(自分が)酒が好きって…、やっぱどこかで寂しいんですかね
直・亮:人好きなんですよ。
一:なんか、楽しい雰囲気が良かったり。人の笑ってる顔ほど、嬉しいものはないですね。



  ookina1
  atogaki   一紀くん、直喜くん、亮陽くん、かまたさん、魁のスタッフのみなさん
貴重な対話のひとときをありがとうございました。

 

みんなの言葉が種子のように運ばれ、笑顔の花が咲きますように。

 

大倉摩矢子

   
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